◆ 第2章 「詳細検討」 1:ステアリングシステム 金田号を見るとまずそのステアリングが目を引く。いったいどうなっているのか。作者の大友氏は外観のインパクトを重視して作画したのだと思う。しかし私はそのままの形で走る仕組みを考えてしまう。 「AKIRA」の作品の中では、金田号の真横から見た絵は出てこない。そのためあくまでも推測の域を出ないが、キャスター角を求めるとおよそ65度(通常は30度程度)。この角度は非常に極端なチョッパーに改造したバイクをも大幅に上回り、Uターンは不可能、交差点で曲がるのも絶望的と言えるほどのディメンジョンである。自律安定性も無いと表現して間違いではない。しかし金田少年は見事にこのバイクを運転し、しばしばスタントまがいのライディングを披露する。結論はひとつ。通常のステアリングシステムとは異なる独自のシステムが採用されているということである。 作品中、フロント部分のカウリングが剥がれているシーンがある。普通のバイクであればフロントフォークが存在する位置に、バイク用リヤサスペンションユニットのショックアブソーバだけのようなものが4本付いているのが描かれている。このことからも独自のステアリングシステムであることは明かである。 しかし問題はどうやって操舵しているのかが不明であることだ。非常に残念なことにカウルが剥がれたままの状態で金田少年はハンドル操作をしてくれなかった。鉄男君がハンドルに寄り掛かってくれてもよかったのだが、残念ながら触れてもいない。 フロントハブ(前輪の車軸を支える部分)の支持のしかたは私のV.S.システムと少し似ている。しかしハブと連結しているサスユニット(既出)は車両左右方向に通されたボルトによって固定されているように見える。これでは上下方向に自由度を持たせることはできても、操舵方向には動作しない。また4本のサスユニットが、もし左右で別々に電子制御されていて、その伸び縮みで操舵する可能性を探っても、ハブの部分に上下方向に通る軸がない限り、タイヤはステアされない。 またサスペンション動作も解明できない。4本のサスユニットそれぞれの上端も左右方向のボルトによって固定されているように見え、それら以外の構造体は見当たらないため、車両の重量をボルトの締め具合によって支えているように見える。(もっともこの部分が詳細に描かれている場面は無いため、不正確な認識である可能性は高い) もし4本のサスユニットをとめるボルトが緩んだら、金田号は車体を地面に落としてしまうのであろうか。いや、例えボルトが緩まなくとも、サスユニットのボルト部にはラバーブッシュが入っていることが多い。いくら締め付けても回転方向の自由度は失わない。従ってこの構造ではフロントサスペンションシステムは車両を支えることができず、金田号は両腕でフロントタイヤを持ち上げるような格好で完全にボトムしてしまうのである。 ただしこれは、私が知っている従来のサスユニットが4本取り付けられていた場合の話である。アニメでは金田号のフロントサスペンションはその性能を充分に発揮し、有効な緩衝動作を行っている。おそらく画期的なシステムが組み込まれているのである。ただし、そのシステムは電動によるアクティブシステムではない可能性が高い。メインスイッチをOFFにしたままでも金田号は姿勢を保ち、エンジンスタート時に姿勢が変化することもない。比較的古典的なパッシブな動作をするシステムのはずである。 |
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序章 ◆ 第1章 「問題点」 ◆ 第2章 「詳細検討」 ・ステアリングシステム ・駆動システム ・最低地上高 つづく |